real feel
第3話

高柳夕梨という女

──4月22日。

ここは会社からの最寄り駅に近い場所にある、喫茶店。
なんだかものすごく気が重い。
来なきゃ良かったかな、なんて本気で後悔し始めたその時、向い合わせで座っている彼女が沈黙を破った。

「突然呼び出して、ごめんなさいね。用件は……分かるでしょ?」

佐伯主任の元カノ、高柳夕梨さん。

「分かりません。仕事の話ですか?それならわざわざ外で会わなくても、会社で」

「違うわ!……翔のことよ。あなたたち付き合っているんでしょ?」

……覚悟は一応してたけど。

「どうして高柳さんがそんなことを気にするんですか?」

「先週末、彼が休日出勤してたのは知ってるかしら。私もだったの。彼に頼まれたのよ、手伝って欲しいってね」

「そうですか……」

主任から仕事を頼むなんて、よっぽど忙しかったのかしら。
高柳さんが早く教事1課の仕事に慣れるように配慮してあげたのかも。

「彼、なんだか元気がなかったように思えたわ。プライベートが充実していないのかしら。ねえ、蘭さん」

「何が言いたいんですか?」

私からの問い掛けには答えず、意味不明なことを言い出した。

「あの時はごめんなさい。電話、びっくりしたでしょ?」

…………電話?

なんて答えたらいいのか分からず、次の言葉を待った。

「……やだ、もしかして解らないの?先週の土曜日のことよ!」

え、もしかして私が主任にかけた電話のこと?

「あのとき電話に出た女性って……高柳さんだったってことですか?」

「そうよ私だったの。まだ知らなかったの?翔ったらちゃんと言ってくれてると思ってたのに。あの時、私たち一緒にいたのよ。仕事の後、手伝ったお礼にって食事しに行って、そのあと彼は私の部屋に来たの」

……嘘、そんなの嘘でしょ。
主任は私に内緒でそんなことするはずがない。
高柳さんとはできるだけ関わりたくないって言ってたもの。

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