real feel
「祥平と会ったのか。邦都市と聞いて嫌な予感がしたんだ。しかし、祥平のやつ、何も俺に言ってこないのはなぜだ。まひろはS・Factoryのことを貴浩兄さんから聞いていたんだろ?どうして俺に言わなかったんだ」

どうしてって言われても。
初めて貴浩部長から聞いたときは、まだ主任と付き合う前だったし。
それに、主任の実家だと知らなかったし。

「佐伯主任だって、実家のことや弟さんやお兄さんのこと、私に教えてくれないじゃないですか!祥平さんから話を聞いて驚いたんですよ私。『何も知らないんですね』なんて呆れられたし。祥平さんは私と主任の関係も知っていたのに!」

いけない、冷静に話すつもりだったのに。
ついつい感情が高ぶってしまう。
いろいろ思い出して、頭がぐちゃぐちゃになってきた。

「ああもう!!いいかげんにしろ、お前ら」

イチにぃが怒鳴った。

「何しに来たんだ?痴話喧嘩ならよそでやれよ。もう帰れ」

そうだ、今日は手伝いに来たんだった。
それに夜は菜津美とイチにぃのお祝いするのに…。

「ご、ごめんなさい。ちゃんと片付けやるから」

まだ興奮は収まらないけど、ここは冷静になって本来の役割を果たさないと。

「翔、まひろと場所を変えてちゃんと話してこい。こんなんじゃ気持ちを切り替えらんないだろ?お前たち2人のお陰で片付けもかなり進んだようだし。ありがとな翔、まひろも。夜は予定通りあの店で待ってるから。な、菜津美」

「……うん。本当に片付けの進み具合が早すぎてビックリしたよ。あとは私たち2人でも楽できそう。だから、夜にまた会いましょう!お疲れさま、ありがとうございました」

佐伯主任と顔を見合わせる。
確かに話ながらも手は動かしていたから、結構捗っていた気はするけど。

「……それじゃお言葉に甘えさせてもらいます。イチにぃ、有田さん、最後まで手伝えずすみませんが、今夜は俺たち2人でちゃんとお祝いさせてもらいますから。まひろ、行こう」

「はい……。2人ともごめんなさい。また夜に……」

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