real feel
たった1度しか会ったことがないけど、祥平さんは主任よりも人当たりが柔らかく温厚な印象だった。
主任の事を話す時も穏やかで、だけど少し寂しげでもあった。
心の距離をもう少し縮められたら、もっと解り合えるんじゃないのかな。

兄弟といっても複雑なんだろうし、私が口出すべきじゃない気がするけど。
でも何か、力になれることはないかな。

「仲が悪いわけじゃない。ただ一緒に過ごす時間が少なすぎて、お互いに距離感が掴めないんだろうな」

「祥平さんとの距離を…縮めようとは思わないんですか?もっと頻繁に会う機会を作るとか」

難しい顔で、あっさりと否定された。

「今更な。たまに会うくらいで丁度いいんだよ。頻繁に会えば信頼関係が深まるとは限らないし」

これはなかなか……。
説得なんていう以前の問題だよね。
だけど、ここで諦めるわけにはいかない。
私がなにかのきっかけを作ることだってできるかも知れないんだから!

「でもですね、主任。子供じゃないんですし、大人として家族と解り合おうとする努力はしてみてもいいんじゃないですか?祥平さんだって……」

「ああもう!祥平祥平って……まひろは俺よりも祥平の肩を持つのか?」

突然、大声を出されてビクッと体が震えた。
肩を持つ………?
どうしてそんなこと言うの。
祥平さんは主任の弟さんでしょ。
私にとっても大事な人に決まってるじゃない。
だけど、私にとって一番大事なのは……。

「主任の弟さんだからじゃないですか。どっちかの肩を持つとか、そんなつもりないのに。主任だって私の弟たちを可愛がってくれるじゃないですか。主任の家族とは仲良くしたいんです。私のこと、主任の彼女として認めて欲しいと思うし……。いけませんか?」

主任はハッとしたように私を見つめた。

「ごめん、あんな言い方して悪かった。俺が新や信やあかりちゃんを大事にしたいって思うのと同じなんだよな。まひろが親しげに『祥平さん』って呼ぶもんだからつい……」

え、それってもしかして……ジェラシー?

「……妬いてくれたんですか、主任」

そんな私の言葉は軽くスルーされたけど、顔がちょっとだけ赤くなってたから、それが答えなんだと受け取っておこう。

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