real feel
「佐伯!久し振りだな。元気そうじゃないか」

「先輩、ご無沙汰してます。今日は突然無理言ってすみません」

「いいって!この前来てくれたときは出張で居なかったからな。会えなくて残念だった。お前も連絡してから来いよな。今日みたいにさ」

さっきの店員さんとは違って、スーツをバシッと着こなした男性が、メニューを手にやって来て主任と談笑する。

「先輩、こちらが俺の彼女です」

"彼女"と紹介され、顔が熱くなるのが分かった。

「初めまして。佐伯主任とお付き合いさせていただいている、蘭まひろと申します」

赤い顔を誤魔化すようにペコッと頭を下げた。

「初めまして。僕はここのカフェのオーナーで、森山と言います。佐伯主任って、同じ会社なのか?」

主任はちょっとバツが悪そうに苦笑いして言った。

「ええまあ。今は部署が違いますが、昨年度は上司と部下としてコンビを組んでいました。それがきっかけです」

「そうか、良かったじゃねえか佐伯。ま、突っ立ってないで座れよ。蘭さん、今日は時間を気にせずゆっくり寛いでください」

森山さんは主任と私に微笑み、メニューを置いていった。

「森山さんは、大学の先輩なんだ。だからここは俺の行きつけの店ってわけ。この個室は特別に用意してもらったんだ」

特別な部屋。
ログハウスみたいな造りだから、自然に囲まれてるようで落ち着くし、窓の外には見晴らしのいい景色が見える。
まさに癒しの空間だ。

「ここだったら、静かだし落ち着いた雰囲気の中でゆっくりお話しできそうですね」

「そうだろ?まずは腹ごしらえからな。この前のランチも美味かったけど、今日は休日だから別メニューを楽しめるはず。ほら」

そう言って私にメニューを差し出すと、柔らかく微笑んだ主任。
土日限定のランチコースを2人とも選んで、楽しく会話しながら少し早目の昼食をじっくりと堪能することができた。

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