real feel
「まひろにしてみれば、どっちでも大差ないかもしれないけど。でもお父さんは麗花さんを好きだったわけじゃないって。麗花さんの周到な計画の上での過ちだった」

麗花さんも言っていたような気がする。

「そうですか。子供の私には分からなかった"大人の事情"があったってことですよね」

ずっと頑なに両親の離婚についての話を聞く事を拒んできた私。
子供だったから詳しくは話せなかったっていうこともあるんだろうけど、私が拒否して受け入れようとしなかったっていうのが一番大きかったんだろう。
大人になった今だからこそ、麗花さんから話を聞かされても、取り乱したりせずに済んだのかもしれない。

「そうだな、大人の事情。子供からしてみれば都合のいい言葉なんだろうな。とりあえず今までのところはいいか?話を進めても大丈夫か?」

私が麗花さんから話を聞いたこと、主任に告げるべきなのかな。
いや、それはやめておこう。
麗花さんが嘘を吐いているっていう可能性だってあるんだし。
主任の話を最後まで聞いて、判断したほうがいいかも知れない。
私のペースに配慮しながら話してくれる主任にしっかり向き合う。

「はい大丈夫です。進めてください」

それから主任は、妊娠した麗花さんが流産してしまったこと、麗花さんと父は10年間の契約結婚だったこと、結果的に麗花さんからの申し出で契約満了と共に離婚した事を話してくれた。

それらの内容は、私が麗花さんから直接聞いた内容と同じだった。
これで、麗花さんが嘘を吐いている訳ではない事が確認できた。

「思ったより落ち着いてるな。相当な覚悟が出来ていたのか、それとも実は知っていた……とか?」

さすが、お見通し?
やっぱり私、主任には隠し事なんて出来ないんだ。

「実は私、邦都市に出張に行った時に会ったんですよ、麗花さんに。そこで麗花さんから話を聞きました。だから今、こんなに落ち着いていられるんだと思います」

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