real feel
もしかして、主任は気付いていたの?
私、何も言わなかったのに……。

主任はちょっと寂しそうな笑顔を見せると、何も言わずに右手を伸ばして私の左頬に手のひらで触れてきた。

「まひろ、痩せたよな。多分、広報に異動になってからだろ。前にも痩せたって事あったけど、それ以上だ。お前が辛い思いをするのは、俺だって辛いんだぞ。だから何でも1人で抱え込まないでくれ。これ以上痩せてしまったら、その……抱き心地が……」

………は?
抱き心地って……。

「前に私が痩せたって、いつの事ですか?」

「それはほら、BBQの頃だ。あんなに痩せたくせに"夏だからダイエットしなきゃ"とか言ってたし。まだ俺に話していない事があるんじゃないのか?この際だから全部吐け。俺に隠し事なんてできるとでも思ってんのか、まひろ」

う………。
やっぱり主任には黙っているなんてできないのね。


「私ずっと、麗花さんのことを恨んできたんです。私の幸せを奪った人だと……」

主任は黙ったまま私を真っ直ぐに見つめている。
その眼差しを信じて、打ち明ける決心をする。

「だけど、麗花さんだけが悪いわけじゃなかったんです。麗花さんの幸せを奪ったのは実は……私。私が幸せの略奪者だったんです」

「な、なんだって……?どうして、まひろが」

そうだよね、いくら主任だって驚くよね。
だって私だって信じられない。
…………信じたくない。

「それだけじゃ意味が分からない。もう少し俺にも理解できるように詳しく話してくれないか。辛い話なのかもしれないけど、俺はちゃんと受け止める覚悟はできてる。だから全部聞かせて」

そうね、もう何も隠す必要なんてない。
ありのままの私を受け止めてくれる大事な人だから。

「父と麗花さんは、許嫁だったそうなんです。昔の話ですけど……」



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