real feel
「営業1課ですか。分かりました」

「蘭さん、配属前にあんまり先入観を与えない方がいいんだろうけど。小久保課長とはあまり深く関わらない方がいいわよ」

いつも歯に衣着せぬ物言いの上村課長が、珍しく口ごもった言い方をする。

「私、小久保課長とは今まで全く関わりがなかったんです。どんな人なのかも知らないんです」

高柳さんからの情報によると、常務の娘さんと結婚してるけど、高柳さんとは結婚前からずっと関係が切れたことがないとか。
営業のエースだった佐伯主任を追い出したとか。
常務の権力を後ろ楯にしているとか。
はっきり言って印象は最悪だ。

「まあ、1ヵ月の辛抱だから。無事に広報に戻ってきてくれることを祈っているわ。もし営業で何か困ったことがあったら、遠慮せずに連絡してね。相談できる相手は私だけじゃなく他にもいるでしょ」

それって、佐伯主任や宮本課長のこと……?

「ありがとうございます。上村課長にそう言ってもらえると、安心できます。営業でいろんなことを吸収して自分に活かせるように頑張ります!」

「あんまり張り切りすぎちゃダメよ。蘭さんが営業に行く代わりにうちにも来てくれるから、こっちのことは気にしなくていいから」

「あ、そうなんですね。私と同じで異動だった人が……」

誰が来るんだろう?
私の代わりだもん、気になる。

「高柳さんが教事1課から来ることになってるから」

え、高柳さん?
ということは、人事交流の間だけは高柳さんは教事1課には居ないってことになる。

「高柳さんのことは気になってたのよね。いい機会だからしっかり広報で働いてもらうつもりよ。蘭さんも営業では慣れないこともあるでしょうけど、無理せず程々に頑張ってね」

「はい。それでは仕事に戻ります」

私が営業に行くことになったと佐伯主任に言ったら、どう思われるんだろう?

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