real feel
「……営業1課だと!?」

ファミレスで食事をしながら、今日上村課長から告げられたことを話した。
私の臨時配属先を聞いて声を荒げた主任。

「主任にとっては古巣ですよね。そして高柳さんもいた営業に、私が行くことになるなんて」

「まひろ、あの男にはできる限り近づくな。1課の小久保課長にはな」

上村課長と同じことを言うなんて。
よっぽど危険人物ってことなの?

「でも私、その1課で小久保課長から指示を仰ぐように言われているんです。仕事上、関わりを持たない訳にはいかないみたいです」

「仕事上は仕方がない。だけどそれ以外はなるべく接触するな。いつものように"笑顔なし愛想なし容赦なし"で。それでOK」

なんか……何気に貶されているような気がしないでもないけど。

「いつも通りの私でいいってことですよね。了解です!」

「"仕事中"のいつも通り、だぞ。素顔のまひろを知る男は俺だけで十分だ。……本当は素直で素っぴんが可愛い女だなんて、誰にも教えてやらねーよ。俺だけのものだ」

やっ………。
もう、主任ったら。
たまに不意打ちでこういう風に私が喜ぶようなことをサラッと言ってくれるんだから……!

今日も本音スイッチ入ってるね。
私いま、顔が真っ赤っかになっているんだろうな。
急に熱持ってきた頬を押さえて、上目使いに主任を見てみる。

主任……?

ドヤ顔でニヤリと笑っているんだろうと思いきや、顔を逸らして明後日の方向を向いたままだ。
耳が尋常じゃないくらいに赤いのを誤魔化したつもりかも知れないけど、決して誤魔化せてはいない。
意外と主任って天然だったりするのかな。
照れてしばらく黙っていた私たちだったけど、次に口を開いたのは私だった。

「私が営業に行っている間、広報には高柳さんが来ることになったそうです」

ようやく私の方に向き直った主任が、話題に乗っかってきた。

< 65 / 221 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop