real feel
カマかけられてるのかも知れないから、あくまで"笑顔なし愛想なし"を貫く。

「まあ、いいけど。1ヵ月しかないからなるべく早く歓迎会をと思ってたんだけど、今週末は俺が都合悪くて。ごめんね来週末にしようかと思ってるんだけど、予定を開けておいてくれるかな」

「来週末、ですか。たった1ヵ月しかいない私のために歓迎会なんて、いいですよ。気が引けますから、なしの方向でお願いしたいんですが」

正直言って迷惑でしかない。
この小久保課長と一緒だというだけでなく、お酒を飲まないといけないなんて。

「まあまあ、そう固い事言わないで。一応課長である俺を立ててもらいたいね。畏まった感じじゃなくて少人数の週末の飲み会って感じで軽く考えてくれればいいから」

そういう言い方をされてしまうと、断り辛い……。

「ああそれとも、彼氏がいい顔しないとか?蘭さんって彼氏の言い成りになるタイプなのかな」

「いいえ、彼氏なんて居ませんから!……分かりました。課長のご厚意に甘えさせていただきます」

ああ胸がズキズキする……。
この人相手にバカ正直に「彼氏います」なんて言える訳がないけど、佐伯主任と付き合ってることを否定しなきゃいけないなんて。
それがこんなにも辛いことだなんて、知らなかった。

「じゃ、来週の金曜日の終業後に。あ、まだメンバー固まってないから1課のみんなにはオフレコで。あんまり大袈裟な飲み会にならないように何人かピックアップするから」

「はい、承知いたしました」

主任にも言っておかなきゃ。
不機嫌になること間違いないけど。

「堅いなぁ。俺が課長だからってそんなに畏まらなくてもいいんだよ。教事1課が長かったからそうなったのかな。あそこお堅そうな雰囲気だしね。営業はフランクだから早く慣れてね、蘭さん」

「はい」

営業は比較的静かな雰囲気の教事1課とは違って、活気に溢れている。
だけど私は、営業の雰囲気に染まるつもりなんてない。

< 71 / 221 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop