real feel
課長は私を和ませようとしてくれているのか、移動の車の中で始終喋りっぱなしだった。
私はほとんど喋らずに済んだから、楽と言えば楽だけど。
たまに話題を振られて答えないといけないのが面倒だった。

あれ?
以前にも似たような経験しなかったかな……。
どうせ大した経験じゃないんだから、思い出すだけ無駄!

結局その日は課長に連れ回され、何件かの予定に付き合わされた。
流石、課長だけのことはある。
精力的に仕事を捌いていく様子を目の当たりにすると、あの噂って本当なのかなって思ってしまう。

"常務の権力を後ろ楯にしている"

まだ補助についてほんの少ししか経っていないし、例え1ヵ月営業にいたとしても、分かることはないかも知れない。
きっとそれでいいのだと思う。
私は小久保課長に関心があるわけではないんだから。



『歓迎会だって?そんなもん口実だろ』

主任に電話で話すと、やっぱり不機嫌になった。

「口実って、なんのですか。丁重にお断りしようとしたんですが、1ヵ月お世話になる手前断りにくくて。1課のメンバーから何人か誘って小規模の飲み会にしてくれるみたいです」

『来週の金曜日だな。場所とか分かったら教えろよ?解っているだろうけどくれぐれもあの課長には気を付け……』

主任もなかなか過保護だよね。
私を心配してくれるのは嬉しいんだけど。

『まひろ、明日はレンタルDVDを借りに行くんだったな。なにか目当ての映画でもあるのか?』

そう、明日は土曜日。
主任の部屋で一緒に映画鑑賞という"おうちデート"なのだ。

「はい、菜津美のオススメの映画を観たいなって思ってるんです!」

前に主任のお気に入りの映画を一緒に観たことがある。
私もすっかりハマってしまい菜津美に話したら、菜津美も大好きだって言ってた。



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