real feel
「蘭さんってホント捌けてるよね!もうずっと営業にいるんじゃないかって思えてくるわ」

「1ヵ月だけなんて勿体ないよね。もうずっと居てくれるように頼んでみようかな、課長に」

今日はちょっと張り切り過ぎたかな。
課長がいないと事務所の雰囲気がいつもより和やかで、仕事がやり易かったっていうのもあると思うんだけど。

「課長は今日も会社には戻られないんですよね。今週はほとんど会っていませんし…。私みたいに慣れていない者が補佐をしていていいんでしょうか…?」

「もう、蘭さん。敬語は堅苦しいってば。課長の補佐は"ある意味"鍛えられるかもね。例えばメンタルとか。私たちにとっては適度に出張に行ってくれてた方が気分的に楽よね」

確かに課長がいない方が雰囲気がいいと感じていた。

「それにしても今週は居なさ過ぎだったわね。課長決済の書類、かなり溜まってるでしょ。来週また機嫌悪くなるかも」

「そうかもしれないけど、週末なんだから嫌なこと忘れよう!私たち今夜飲みに行くんだけど、蘭さんも一緒にどう?」

「え、今夜ですか」

課長が1課の人を何人か誘って飲み会の予定だけど。
池田さんと朝川さんはメンバーに入っていないの?

「すみません、今夜は先約がありまして。また誘ってください」

「えーそうなの?残念だなぁ」

「絶対また誘うからね!」

もしかしてこれも、サプライズの一環?
こんな風に言っておいて、後で飲み会で会ったときに驚かせようって魂胆かしら。
朝川さんや池田さんならやりかねないかも。
いつもテンション高いし。
よく分からないけど騙されたふりをしておいた方がいいのかな。

「そう言えば蘭さんって誕生日4月1日なんだよね。学年で一番遅く生まれたことになるんだよね。同い年で一番若いっていいわわよね!」

「池田さん、どうして私の誕生日を知ってるんですか?」

素朴な疑問だった。
そんなに親しい間柄でもないし、営業1課に来てから誕生日の話題になったこともないはずだけど。

「どうしてって……。ちょっと前にシャ食で蘭さんと有田さんが話してるのを偶然聞いたから。すぐ近くに座ったことがあったのよね。ねえ、朝川さん」

「あの時は、高柳さんが一緒だったよね。高柳さんがさっさと場所を決めちゃうんだもん。2年先輩だけど同い年なのにね!」

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