real feel
「あら、蘭さんじゃないの!」

「まひろ?なんでお前……」

「上村課長と、宮本課長!」

え……。
この組み合わせって一体……。

「まひろ、お前なんでこんな場所にいるんだ?誰と一緒に来たんだ」

「えっと、それは…………」

小久保課長と一緒だって言っていいものなのか。
どうしよう……。

どう説明しようかと焦りながら考えていると、背後から私を呼ぶ声が聞こえた。

「蘭さん、こんなところに居たんだ。迷子になったのかと……。おや?」

小久保課長………。
なんてタイミング悪いの。

上村課長と宮本課長と、小久保課長と私。
まさかの対面にみんな黙ってしまったけど、クスッとこの場に似つかわしくない笑い声が緊迫した空気を壊した。

「宮本さんに上村さん……。こんな場所でお会いするとは、ははは参ったな。大丈夫ですよ、秘密は守りますから。蘭さん、料理が来たから戻ろうか。では、僕たちはあちらの方に部屋を取ってありますので。失礼します」

「あ、え、あの、か、課長!?」

小久保課長に強引に肩を抱かれて、部屋に連れ戻される私。
それを唖然として見ている、宮本課長と上村課長。

これって、非常にマズイんじゃない?
結局、佐伯主任に電話をかけることも出来なかった。


「せっかくの料理なんだから、いただこうか」

部屋に戻ってきたけれど、ハッキリ言って食事どころではない。
なんでこんなことになってしまったんだろう。

「課長、ここに私を連れてきた目的って、何ですか?」

「君の歓迎会に決まってるじゃないか。最高の席を用意したつもりだけど、お気に召さなかったかな」

課長は平然と食事を続けている。
この人、一体何を考えているんだろう。
人を喰ったような余裕の表情で、ゆったりと構えて……。

「もしかしたら、宮本課長と上村課長がここに来る事を知ってたんじゃないですか?」

「人聞きが悪いな、蘭さん。さっきの遭遇の場面を俺が演出したとでも言いたいのかい?」

だって、そうとしか思えないよ。
どういう目的でこんなシナリオが描かれたのか疑問だけど。
なんらかの情報を読み取ろうとするけど、課長の表情は相変わらず。
ただ黙々と料理を口に運んで、しれっとした目を私に向けている。

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