real feel
唇と唇の僅かな隙間から、やっとの思いで声を逃がしてみた。

「しゅ、主任……。ここじゃ、嫌」

やっとキスを止めて2人見つめ合う体勢になった。

「じゃあ、どこだったらいいんだ。ここが嫌なら、どこで抱かれたいのか言えよ……まひろ」

全然優しくなんかないじゃない。
勘違いだったの?
いつもより意地悪だよね。

迫田さんと一緒だったことが気に入らないのかな。
そりゃちゃんと事前に報告できなくて悪かったけど……。
主任、これは……嫉妬ですか?

「ていうか、その前にシャワー浴びさせてもらえませんか?」

逃げ口上だとバレバレだろうけど、シャワー浴びたいのは本音。
『却下』されちゃうのかな。

「きちんとおねだり出来たらな。どこで抱いて欲しいって言えたら、シャワー浴びさせてやるよ」

う……。
主任、どうしても私の口から言わせたいのね。
こうなったら……言っちゃえ!!


「私は……大好きな主任がいつも寝ているベッドがいいです。吉田先生と主任の共有するソファーじゃなくて……主任の部屋のベッドで、抱いてください」

ボンッ!!
頭から火を噴いたかと思った。

今日の私はお酒を飲みすぎたせいか、大胆になってしまったようだ。
一瞬の沈黙のあと、ギューっと力強く抱き締められた。

「……上出来だ。シャワー浴びてから、お望み通りに俺のベッドで抱いてやるよ」

そう言うと、軽々と私を抱き抱えバスルームへ移動する主任。
あまりにもスマートな動きに、声を上げることすらままならない。

「じ、自分で動けますから!おろしてください!」

やっと言葉を発したけど相手にしてもらえない。

「酔っぱらいは1人だと危ないからな。ちゃんと洗ってやるよ、心配するな」

そんな心配してませんってば!
これは嫉妬だけじゃないでしょ!?

私、一体主任の"何スイッチ"入れちゃったんだろう……?


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