大和撫子物語
そう言い時雨が見つめたのは、エレナの作品だった。「えっ……」とエレナの口から言葉が漏れる。

「これね、エレナが作ったんだよ〜」

蛍がそう言って、背後に隠れていたエレナを前に出す。時雨の前に立ち、エレナは顔を赤くした。

「えっと……あの、ありがとうございます。……でも、まだまだですので、修行します」

「そうなのですか?とても美しい作品だと思うのですが……」

時雨がそう言うが、エレナは首を横に振る。きっと時雨の作った作品の方が何倍も上手だ。

「よかったら、時雨も作っていかない?」

結衣がそう言い、「いいね!」と蛍も言う。時雨は少し考えた後、エレナの方を一瞬見て微笑んだ。

「……そうですね、では少しだけ……」

そう言い、時雨は席に座ってすぐに作品を作り始める。花を手にするその指は、まるで女性のもののように細い。エレナはその細さに驚き、頰を染めた。

時雨の作った作品は、エレナが想像した通りとても美しいものだった。結衣が見せてくれた華道の先生が作り出す作品のように、とても美しい。
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