大和撫子物語
「桜ですか……。ぜひ、見てみたいです」

「春になったら、一緒に見に行きませんか？桜が綺麗に見える場所を知っておりますので……」

「はい、楽しみにしております」

普通の女子高生と男子高生のする会話ではないと思いながらも、エレナは幸せでいっぱいだった。その時、時雨が「今日は髪留めをつけていらっしゃるのですか」と呟く。

エレナの金色の髪には、ピンクの花の形をした和風の髪留めがつけられている。結衣が京都に行った際にお土産でくれたものだ。

「結衣からお土産でもらいました。変でしょうか？」

不安でいっぱいの表情になりながら、エレナは訊ねる。時雨は首を横に振った。

「いえ、とてもよく似合っていますよ」

「……ありがとうございます」

予鈴を告げるチャイムが鳴り響く。五限目は、時雨のクラスは数学でエレナのクラスは英語だ。授業について話しながら教室へと向かう。

「私は、実は英語が苦手なのです。小玉さんは得意だと伺ったのですが、よろしければ教えていただけないでしょうか？」

時雨からの頼みに、エレナは「わ、私でよければいつでもお力になります！」と答える。
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