大和撫子物語
「ありがとうございます。このご時世ですし、英語を覚えたいのですが、なかなか覚えることができないのです」

「コツを掴めば簡単ですよ。英語よりも日本語の方が難しいんです」

「普段から話しているので自覚はありませんが、漢字やひらがながあるからでしょうか?」

「はい。ほとんどのヨーロッパ言語とはかけ離れた文法ですし……」

エレナはもっと話していたかったのだが、教室の前には必ず着いてしまう。クラスが同じでないことに、エレナは寂しさを感じた。

「では、失礼します」

時雨はペコリと頭を下げる。エレナも「はい」と返事をして、ペコリと同じように頭を下げた。何度も頭を下げるうちに、すっかりこの動作に慣れてしまった。

エレナは英語の授業の準備を忘れていたことに気づき、慌てて教室へと向かった。



今日は、蛍と結衣はそれぞれ部活動があるため、エレナの大和撫子に向けての特訓は自主練習となる。エレナは教室でひたすら漢字練習をしていた。

ウクライナにいた頃は漢字に触れることがあまりなかったため、漢字は少し苦手だ。
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