大和撫子物語
「猿、渦、牙……」

読み方を確認しながら、エレナは練習ドリルを解いていく。漢字が読み書きできないようでは、大和撫子と言っていられない。

ひたすら漢字練習をしていたエレナだったが、それは教室に入ってきた人たちによって邪魔されることになる。

「うわ〜、何やってんの!?こんな時間になっても勉強?」

「いやいや、男に褒めてもらうためでしょ〜」

教室の扉が開き、エレナを馬鹿にしながらクラスメートが入ってくる。エレナはそれを一瞬横目で見たが、無視してすぐに漢字練習を再開する。

「無視してんじゃねぇよ!!」

怒鳴りながらクラスメートの一人がエレナの髪を掴む。エレナは「痛い!」と悲鳴を上げ、漢字練習をしていたノートを机の上から落とした。それをクラスメートが拾い上げる。

「何これ?こんな簡単な漢字も書けないの〜?」

「もうさ、日本から出て行けば?ウク……何とか国に引きこもってればいいじゃん!」

クラスメートはゲラゲラとまた笑い、エレナは痛む頭を押さえながらクラスメートが出て行くのを待つ。反抗したら余計にひどくなるかもしれないと思ったからだ。
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