欲しがりな幼なじみ
「佐々木さん、大丈夫?」
「……」
そう、聞いてくるから。
「大丈夫だよ」
と、短く返して私は保健室を出た。
後ろ手に扉を閉めて、体育館へと戻るために廊下を歩いていく。
『……由良くんは、ただの幼なじみだよ』
嘘だ。
由良くんのことを想っている人を目の前にして、
やっと、私は自分の気持ちを自覚した。
萩原さんから由良くんの名前が出てきたときに、
"取られたくない"って、身勝手なことを思った。
前にも、同じことを思った記憶がある。
あれは高校1年の、確か文化祭期間の時だった。
その時にも由良くんのことを取られたくないって思ったのに、
私は無意識にその気持ちに蓋をしていた。