欲しがりな幼なじみ
焦げ茶色の髪から滴る雫が、由良くんの首筋をつたっている。
それが、妙に色っぽくて。
「……それだけ、です」
大丈夫じゃあ、なかった。
「そういうことなので、私はこれで……」
また明日ね!とそう言って、自分の家に戻ろうと足を動かした時。
由良くんの腕が伸びた。
「っ……!」
ガチャ、と閉まる扉
玄関にミカンが1個転がる
由良くんに引っ張られて、薄暗い玄関で、由良くんと2人きり。
文字に起こすとたったこれだけのことなのに、
バクバクと心臓が鳴り止まない。
「逃げんなってば」
耳元で聞こえたその小さな声に、ビクッと肩が揺れた。
掴んでいた腕を離して、転がるミカンを拾って、
「入れば」と、由良くんはそう言う。