欲しがりな幼なじみ


焦げ茶色の髪から滴る雫が、由良くんの首筋をつたっている。


それが、妙に色っぽくて。



「……それだけ、です」



大丈夫じゃあ、なかった。



「そういうことなので、私はこれで……」



また明日ね!とそう言って、自分の家に戻ろうと足を動かした時。

由良くんの腕が伸びた。



「っ……!」



ガチャ、と閉まる扉

玄関にミカンが1個転がる


由良くんに引っ張られて、薄暗い玄関で、由良くんと2人きり。


文字に起こすとたったこれだけのことなのに、
バクバクと心臓が鳴り止まない。



「逃げんなってば」



耳元で聞こえたその小さな声に、ビクッと肩が揺れた。



掴んでいた腕を離して、転がるミカンを拾って、

「入れば」と、由良くんはそう言う。

< 137 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop