欲しがりな幼なじみ
「分かんないとこがあるんじゃねーの」
私は、片手に持っていた教材をチラリと見た。
……幼なじみなんだから、相手の部屋で課題を教えてもらうことぐらい、
別にどうってことない。
「お邪魔します……」
中に入ると、やっぱり由良くんの両親はいなかった。
2人とも夜勤だからと、由良くんはそう言いながら自分の部屋に入る。
由良くんの部屋は、小さい頃と比べて物が少なくなった。
2人でよく見ていたアニメのポスターも、車のおもちゃも、今はもうクローゼットの奥深くにしまわれているんだろう。
でも、匂いだけは変わらない。
由良くんの部屋は、由良くんの匂いがする。
私は、由良くんの匂いが好きだった。