欲しがりな幼なじみ
「……もう分かってんだろ、お前も」
自分勝手だと、思う。
由良くんのことが好きなのに、幼なじみとしての関係を壊したくないと思うのは。
由良くんの気持ちをなんとなく察している今でも、
これまでの関係を壊すのが怖いと思うのは。
でも、だって、ずっと好きでいてくれる保証なんて、どこにもないじゃない。
保健室で萩原さんの背中をさすっていた姿と
スクールバッグの中にあったカップケーキと
いつの日か、由良くん家の玄関の前で、女の子と楽しそうに話をしていた姿を、思い浮かべる。
「意味、分かんないよ……」
絞り出した私の小さな声に、由良くんの瞳が揺れた。
由良くん、と名前を呼ぼうとしたけれど
「っ、」
唇が重なったせいで、叶わなかった。