欲しがりな幼なじみ
冷たくなってから名前なんて呼ばれなかったんだよ?
ずっと"おい"とか"なぁ"だったんだよ?
昨日の由良くんの姿を思い浮かべて、思わず笑ってしまう。
「名前呼ばれたの久しぶりだったから、嬉しいなぁ」
由良くんは最近わたしに冷たいけれど、
本当は、心の底からわたしのことを嫌っているわけではない……のかもしれない。
そのことに少し安心する。
「結佳はさぁ、由良くんのこと好きとか思ったことないの?」
冬の廊下は隙間風が吹いて肌寒い。
ブレザーのポケットに手を入れて寒そうにしながら聞いてくる志保に、わたしは首を傾げた。
「もちろん好きだけど。幼なじみだし」
「あー、と、そういうことじゃないんだけどなぁ」