欲しがりな幼なじみ


何も言えないでいる俺に、世菜はまた笑う。



「告白、出来なかった」

「え?」



小さな声だった。



「由良くんの中に、私が入り込める隙はないって改めて実感しちゃって」



弱々しく笑うその姿に、胸が締め付けられる。


好きな人の恋を応援するなんて、俺には出来ない。
出来ないと、思った。


でも、今目の前で、悲しそうに笑う姿を見たら。

そんなこと、言ってられないでしょ……。




「世菜は、それでいいの」



世菜の腕を引っ張って、俺はある所へと向かって歩く。



「え……つ、司?」



1組の教室を通り過ぎたところで、世菜は何かを察したのか今度は少し大きな声で「司っ」と名前を呼んだ。



「ねぇ、いいってば!離してっ」

< 190 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop