欲しがりな幼なじみ
その声に、俺は足を止めた。
振り返って、世菜を見る。
「自分の気持ち伝えないままで、本当にいいの?」
そんなの良くないでしょ。
「世菜、後悔するじゃん。絶対」
「つかさ、」
「神田と一緒にいたいから、告白するんじゃないの」
「……」
「ちがう?」
ギュッと、手に力を込める。
世菜の瞳がゆらゆらと揺れる。
「ちがわ、ない」
唇を引き結んで、意を決したように世菜はそう言った。
そんな彼女に、俺は掴んでいる腕を離す。
「ありがと、司」と、世菜は言った。
パッと笑う。
「いいよ」なんて言いながら。
俺の横を通り過ぎる。
世菜は、これから神田の所に行く。
"好き"だと、言うために。