欲しがりな幼なじみ
「いや、直接誘われても」
「どうして?俺のこと嫌い?」
「そんなことはないですけど……」
渋るわたしに、史哉先輩は笑顔を崩さずに一歩近づいた。
下校時間まであともう少し。
廊下にはわたしと先輩の2人きり。
「今日は幼なじみと一緒じゃないんだね」
「……由良くんのこと知ってるんですか?」
そのことに少し驚く。
なんで知ってるんだろう。
「そりゃあね。有名だもん。お姫様を守る騎士みたいだって」
ふざけたように言う史哉先輩に、わたしは眉を寄せた。
お姫様を守るって、なにそれ。
「結佳ちゃん、自分で気付いてないと思うけどさー……」
もう一歩、わたしに近づいた史哉先輩は、慣れたようにその手を伸ばした。