欲しがりな幼なじみ
史哉先輩との出来事は、次の日少しだけ噂になっていた。
わたしが先輩を誘惑したとか、そんな感じの噂。
まぁ、どうせ先輩が自分で流したものだ。
だけど、史哉先輩はもともと周りからの評判が悪かったから、そんな噂は誰も信じていなかったみたいで。
1日も経てば、そんなことを面白おかしく話す人は居なくなっていた。
キスマークも、史哉先輩とのことも、もう今では綺麗さっぱり無かったことになっている。
いつも通り、なんだけど。
「おい」
「ぅわっ、」
いきなり由良くんが腕を引っ張った。
バランスを崩したわたしは、ポスリと由良くんの胸に。
その瞬間、自転車が勢いよく私たちの横を通り抜けた。
「何ぼーっとしてんだよ」
「……」