欲しがりな幼なじみ
「わっ」と思わず声が出てよろけた時、由良くんの腕が伸びた。
「……ちゃんとしろよ」
小さな声で、呆れたように言った由良くんはわたしの手首を掴んでいて、
わたしはパチパチと瞬きをしてしまう。
「うん、ごめん……ありがと」
学校は、最寄りの駅から電車で二駅のところにある。
満員電車から解放されたわたしと由良くんは、並んで学校までの道のりを歩く。
「由良くん、さっきはありがとうね」
「別に」
「最近すごい冷たいけど、なんだかんだいってわたしのこと放って置けないんだね」
「……うざい」
また舌打ちをして、スタスタと歩いて行ってしまう由良くん。
気づけばもう学校はすぐそこだった。
「由良くん、また放課後ねー!」
大きな声でそう言った。
由良くんからの返事は気にしない。
とにかく、こうしてわたしの1日は始まっていく。