願いを込めて
「…別れる?意味分かんないんだけど、どういう事」



蓮の私を見つめる瞳は真っ直ぐで揺らがない。



「あのね、信じて貰えないかもしれないんだけど、……」



(怖い、)



私は、ぎゅっと目を瞑って口を開いた。



「私、バンパイアなの。…仮装とか嘘じゃなくて、私はバンパイアの末裔なの」



「…っ………」



この沈黙が、1番嫌だ。



「だからね、だからって訳では無いんだけど…。私に、蓮の血を吸わせてほしい」



勘違いしないで欲しいんだけど、ただ蓮の血を飲みたいから頼んでるんじゃなくて、蓮を治せるかもしれないから飲みたいの!、と、私は付け足して懇願する。




「………僕はさくらと別れるつもりは無いよ。……だから良いよ、僕に何しても」



ずっと拒否されると思っていた願い。



それなのに、彼の出した答えは意外なものだった。



逆に驚き過ぎて、私がはっと目を開けて彼を見ると。



「どうせもう残り少ない命だし、この間余命宣告されたばっかだし……。もう神様なんて居ないって分かったから、バンパイアだなんて嘘だろうけど、でもさくらの好きにして良いよ」



彼の表情も台詞も、全てに対して諦めていた。



ただ、さくらのお陰でもしも病状が回復したら……、さくらがバンパイアだって、信じてあげるね、と、彼は薄らと笑みを浮かべた。




「…ありがとう」



ああ、痩せ細った彼の首筋に浮かび上がる血管にしか目がいかない。
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