願いを込めて
(あぁ、美味しいっ……!)



この美味しさも、最初の方だけしか感じないのは分かっている。



それでも構わない私は、蓮からの返事も待たずに彼の首に手を這わせた。



「待って、本当に………飲んでるのっ、?」



(フィラデルフィア染色体、出ておいで…私が全部飲んであげるっ……蓮を元気にさせないと、)



ほとんど理性を失いかけている私の耳に聞こえてきたのは、驚きを隠せていない彼氏の声。



「ん?…うん、飲んでるっ……、安心して、蓮の増え過ぎたフィラデルフィア染色体は私が飲んであげるから」



その証拠に、先程まで美味しいと感じていた彼の血の味は、段々と不味く感じてきている。



「でも、待って……これ以上飲まれる…?と、僕貧血になるかも、……」



「んっ、それは大丈夫、………輸血すれば良いから、……気持ち悪くなったらナースコール、押し、てっ…ん、……」



蓮の頭が壁にぴったりとついているお陰で、私も血を飲みやすい体制が保てている。



けれど、何と言っていいか、控えめに言って飲むのを止めたいくらい彼の血は美味しくなくて。



今まで酷い時には1日に500ml以上飲んでいた人の血だけれど、ここまで不味いと感じたのは初めてかもしれない。
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