いたずらな入江くん


「き、木村くんが用意してたの、代わりに着たんだね!」


かっこいいね!って言えなくても。

せめて、似合うね!くらい言えたらよかった。

わたしの口から出てくれたのは、これくらいの言葉。


「ああ。まあ、変な仮装じゃなくてよかった」


入江くんは台の上に置いてあるチラシを半分手に取ると、もう半分をわたしに差し出してくれた。


「あ…っありがとう」


「さっさと配ろ」


さっさと。

言葉通り彼はさっさと歩いていく。


わたしの格好にはノーコメントどころか、一瞬しか見てくれなかった気がする。


自分ばかり意識していることが、

少しかなしくなった。


せめてわたしの仮装も、入江くんの瞳に変に映ってなければうれしい。

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