いたずらな入江くん


「……わっ、……入江、くん?」


外へ繋がる扉の真ん前で、いきなり足を止めた入江くん。


あまりにも急で、思わずマントに飛び込みそうになった。


「…………やっぱり………嫌だな」


吸血鬼の彼はポツリとそう呟くと、そのまま立ち止まってしまった。


「な、なにが………?」


配るのが嫌なのかな……?

さっき、“さっさと配ろ”と言ったばかりなのに、突然どうしたんだろう。


「…珍しいね。浅木がそんな仮装選ぶなんて」


わたしの疑問はスルーされて、

不意にそんなことを言われた。


わたしの仮装なんてまったく興味のない素振りだったのに。


どきっと心臓が高く波を打って、緊張から変な汗が出てきた。


顔が見えないから、どういう意味での“そんな”なのかが分からない。

たんに珍しいという意味か。

似合ってないという意味か。


好きな人に言われると…………

ちっともわからなくなる。

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