【完】STRAY CAT
ぴら、っと恭が見せてきたのは、何かのチケット。
受け取ってよく見てみれば、『完成試写会ご招待』の文字。……映画の招待券?
「借りた、って……
恭と、すこし話してきただけなのに?」
「っつー名目で、押し付けてきてるだけだけどな。
こないだ彼女に振られたから、行く相手いねーんだと」
いっしょに行くか?と。
首をかしげられて、思わず笑顔になってしまう。
「行ってくれるの?」
「ん。……たまにはいーだろ、出掛けんのも」
恭とデートなんて、ほとんどない。
学校でもずっと一緒で、放課後に家に来てくれることも多いから、いまさらどこかに出かけることもなかった。あったとしても、長期休みに一度あればいい方。
「でもこれベタベタのラブストーリーだよ?」
だからこそ、デートしたい気持ちはすごく強いけど。
恭はラブストーリーなんか見ないだろうし、とすこしだけ落ち込む。
テレビでも公開予定でたくさん宣伝していた、王道ラブストーリーの映画。
観たいなぁ、とすこしだけ思っていた作品だ。
「……行きたいんじゃねーの?」
「うん。行きたい、けど、」
「んじゃ、決定な」
……行ってくれるんだ。
観たい訳でもなさそうなのに、わたしとデートするために、行ってくれるんだ。