【完】STRAY CAT
「飲むもん決まってんなら買ってきてやるけど」
「普通にコーヒーでいい。
シロップもフレッシュもいらないから」
「お前には遠慮ってふた文字がねえな」
だってハセに遠慮したって無駄でしょ。
近くのOLっぽいふたり組が、ハセがかっこいいからかこっちを見てる。そしてわたしの頼み方に明らかに嫌そうな顔をしたけど、こういうのが一番ムカつく。
ハセの見た目だけで、わたしを悪者扱い。
たしかにわたしも「お願い」やら「ありがとう」やら言ってないのは確かだけど、もちろんお礼ならあとで言う。
「……これは?」
関係のない人間が関わってくることほど嫌なことってないでしょ。
そういうのを余計なお世話って言うわけで。
「お前甘いもの好きじゃん」
数分後、席にもどってきたハセが持っていたトレーの上には、アイスコーヒーがふたつ。
そして白いお皿の上に、真っ白なケーキが乗っていた。
「……いや、好きだけど、」
「言ったろ、息抜きだって。
たまには甘いもんでも食って糖分補給しろよ」
……なんでそう、気をきかせるのか。
我ながら可愛くないなって自覚もあるし、なんなら面倒な女だって自覚もある。なのにどうして、ハセは無条件にわたしに優しく出来るんだろう。
「……ありがと。
コーヒーとケーキ、いくらだった?」
「金出させるぐらいならはじめから誘ってねえよ。
いいから食えって。お前は糖分よりカルシウム不足な気がするけどな」