【完】STRAY CAT
「おはよう、恭っ」
「ん、はよ。
……愛さん、鞠と出掛けてきますね」
19時までには帰ってくるんで、と。
寝ぼけまなこな蒔を抱き抱えて出てきたお母さんに、恭がそうやって約束してくれる。
時間を決めたわけじゃないけど、いつも帰ってくるのはその時間だった。
わたしが外食を控えているのを知っている恭は、夕飯をうちで済ませることに文句を言わない。
だから、その時間に帰ってきた後、恭も交えて四人でいっしょに夕飯の時間を過ごす。
次の日が日曜日なら、恭がたまに泊まってくれる。
「いつもありがとう、恭くん。
……気をつけてね。いってらっしゃい」
そんな生活をわたしは気に入っていたし、お母さんも蒔も、すごく楽しみにしてくれていた。
恭だって、一緒に過ごすのを楽しんでくれてる。
それが、とてもうれしかった。
家族には、恭を。恭には、家族を。受け入れてもらえたような気がして。
「……いつもより張り切ってんな」
いってきますと声を揃えて出発したあと。
どちらともなく手を繋いだら、恭にそう言われてしまった。
「っ、だって……」
張り切ってるって、どれのことだろう。
服か、髪か、それともわたしの雰囲気すべてか。
思い当たる節が多すぎて、言い返せない。
「……すげー、かわいいよ」