【完】STRAY CAT
「おねえちゃん……?」
「うん?」
「きょーちゃんのこと、すき?」
息が止まった。
そんなことを聞かれるなんて思わなくて、すこしだけ表情が引きつってしまう。……なんで、急に。
「きらい、なの?」
「ううん……嫌いじゃないよ」
恭と別れてすぐの頃は、「きょーちゃんは?」と聞かれたこともある。
けれどわたしが口にしないようにしているのに気づいたのか、彼女が恭のことを聞いてくることはそれからなかった。
「えへへ、よかったぁ……」
「……よかった? どうして?」
聞き返しても、返事がない。
蒔?と顔を覗き込めば、疲れてしまったのか彼女はもうぐっすり夢の中で。今まで話してたのに、と思いつつも、その寝顔を見たら安心した。
……恭のことは、好きだけど。
もうわたしに残された時間は、ほんの僅かで。
「なに、してるんだろう……」
思いを消したくて、ハセを頼った。
好きだと言ってくれる彼を利用して、忘れようとした。
それなのに。
どうしてこんなに、気持ちが揺らいでいるんだろう。