【完】STRAY CAT
わたしと果歩は仲良しだけど、お互いのことを深くまでは知らない。
放課後、蒔のことを考慮した上で何度か一緒に出掛けたこともあるけど、休日に集まるほどの仲じゃない。
「わたし、そんなに純粋でもないから」
「……へ?」
「果歩が知らないだけ。
だから別に心配されるほどじゃないわよ」
自分の荷物を纏めていたハセが、わたしのすぐそばまで歩み寄ってくる。
それから、わたしの頭の上に腕を乗せた。
「糸井が困ってんじゃん」
訳が分からないとでも言いたげに困った顔をしている果歩。
それを見兼ねたように、ハセが口を開いた。
「俺と鞠。……付き合ってんの」
「え、」
驚いたように、見開かれた瞳。成り行きを見守っていたクラスメイトたちがざわつきだして、ハセと仲の良い男子たちが「まじで?」なんて冷やかしてくる。
鉄壁の女をついに陥落させた、とでも言いたいんだろう。
「ほんと、なの?」
「ほんと」
果歩のハニーブラウンの髪が、さらりと揺れる。
視線がわずかに下へ落ちるのを、まるで他人事のように眺めて。
やりきれない感情を、呑み込む。
……べつにわたしは、ハセを好きなわけじゃない。