【完】STRAY CAT
「狙ってたわよね?
さり気なくわたしのこと牽制しながら」
「っ、違、」
「あら。
ハセを好きなことは否定しなくていいの?」
薄ら、気づいてはいた。
わたしには基本的に女の子が寄ってこないし、よくも思われない。だけど果歩ははじめからずっと、わたしのそばにいた。
そして当たり前のように今も一緒にいるけれど。
彼女は決まってわたしとハセが一緒にいるときに、男の"ついてない"エピソードを口にする。そしてあからさまにわたしにハセを薦め、「興味ない」と言わせていた。
「そうやってハセがわたしを諦めてくれるように仕向けてた。
だけどハセ、案外神経図太かったみたい。ごめんね?」
果歩が何か言いたげに口を開きかける。
けれど結局、何も言わずに閉じてしまった。
「わざわざ高1のときからわたしに近づいたのにね?」
ハセとわたしは入学前の一件で、はじめから仲が良かった。
それを見て、わたしを利用しようと決めたんだろう。
その友だちとして、仲良しのポジションに自分がいることで。
ハセを好いているほかの女の子との距離を、圧倒的に離すために。
「気づいてたんだ……?」
「まあ、仮にもずっと一緒にいたんだもの」
それらはすべて果歩の作り出した世界だったわけだけど。
ハセがわたしと付き合った今、果歩にとって最も邪魔な敵がわたしに変わったんだから、もう仲良くする必要はない。
……果歩のことは、嫌いなわけじゃないけど。