【完】STRAY CAT
「頼むから……
はやく、俺のこと好きだって言って」
ハセがわたしの前で、そんな顔をするのは。
「……紘夢」
名前を呼べば、強引なくちづけは少しばかりしっとりしたものに変わる。
けれど根本的な部分は何も変わっていないようで、回数だけが増していく。
「……俺は、お前が思ってるほど優しくねえよ」
「そんな、こと」
背中に触れたままのドアが冷たい。
愛を囁いてほしいなんて思わないけれど、ハセの口から吐き出される言葉は、やっぱり懺悔しているみたいに。
「どうすれば、俺のこと好きになってくれんの?」
「ひろ、」
「身体は受け入れてくれたのにさ。
……逆にお前の心の中では拒絶されてる気がする」
強引さは消えて、優しくなったくちづけ。
溶かされてしまいそうなほどやわらかいのに、心の内側だけをぎりぎりと締め付けていく。
「お前、俺のこと好きになろうってほんとに思ってる?」
静かにお互いの身を、抉るように。
どうしようもなく愛されてるのは、知ってる。
なのに。
なのにどうして、こんなにも、苦しいの?