【完】STRAY CAT
第8章 エヴァー・プリンス
◆ Side Hiromu
好きになったのは、はじめてその笑顔を見たときで。
鞠がモテるたびに不安になって、男どもを冷たくあしらっていたあの頃は安心していて、でも、やっぱり。
「……すごいね。首席、今回も橘花さんじゃん」
俺は、はやくそれ以上の仲になりたくて堪らなかった。
何度玉砕しても構わないから、隣にいたかった。
何度も何度も告白を繰り返していたのは、
ほかの男に対する牽制だって言ったら、笑われるだろうか。
──偏差値70越えの進学校である、藤咲第二。
それでもテストの結果には、大きく差が出るわけで。
「あいつが首席じゃなかったことねえじゃん」
テスト最終日の翌日、昼休み。
貼り出されたテスト順位トップ100の1番上には、相も変わらず鞠の名前がある。一緒にその結果を見にきた男友達は、俺のそれを聞いて、やけに悪戯っぽく目を細めた。
「彼女自慢?」
「自慢、ってか……すげえのはほんとだし」
「まあね。よかったじゃん、付き合えて」
……つーか、俺次席なのに鞠と13点も差空いてんじゃん。
あいつテスト直前に俺と買い物行ったりしてんのに、よくあんな点数取れんな。……その分、裏で努力してんだろうけど。
「で、昨日のお家デートはどうだった?」
「お前はじめからそっちが聞きたかったんだろ?」
今回も自信があったのか、それともただ興味が無いだけなのか。
鞠は順位を見に来ることもないし、前に一度褒めてみたけど「当たり前でしょ」と素っ気なく返されただけだった。