【完】STRAY CAT
「あ、でも……!
別にハセくんのこと取ろうとか、そんな風に思ってるわけじゃなくて!ほんとはずっと、好き、だったんだけど言えなくて……」
周囲の目が、俺らに向けられる。
糸井もそれを感じたのか、その表情は徐々に焦りを混ぜていく。それでもまっすぐ俺に、伝えようとしてくれて。
「ほんとに鞠とのことは応援してて……
好きなんだけど、そうじゃないっていうか……」
「……うん」
純粋にその好意は、嬉しいと思う。
困ったように視線を落として、それから糸井はまた俺を見た。
「ハセくんのことは好きだけど、でもそれ以上に鞠のことだいすきなの。
だから……本当に応援してるから。振ってください」
好きって言われたり、振ったら「じゃあ1回きりの関係でいいから!」と言われたこともある。
それはまあ、なんだかんだ有難く頂戴してたりしたけど、振ってくださいって言われたのはさすがにはじめてだ。
「……ごめん、糸井。
やっぱ、鞠以外とか、考えらんねえから」
「うん、」
「……その気持ちだけ、受け取っとく」
ありがとな、って。
言えば糸井はふるふると首を横に振る。そして。
「鞠ぃ……っ!」
騒ぎを聞いたのか、別件か。
教室から出てきた鞠に、思いっきり抱きついた。
……熱烈だな。
鞠も鞠で、「仕方ないわね」って顔してるし。