【完】STRAY CAT
「ごめんねぇ……っ。
ほんとは鞠のこと、すっごくだいすきなの……!!」
「……うん」
「ほんとに最初はハセくん目的だったから、それは、ごめんなさい……っ。
でも今は鞠のこと大好きだから、っ……嫌いにならないで……」
今にも泣きそうな顔で告げる糸井。
それを見た鞠は、「バカね」って小さく笑って、糸井のことを慰めてやっていた。
ぽろぽろ泣いてる糸井と、呆れながらも心なしか嬉しそうな鞠。
大丈夫そうだなと思いつつ見つめていたら、糸井をなだめていた鞠が顔を上げて、目が合う。
「、」
どきり、と。
心臓が跳ねたのは一瞬で、隣にいた男友達に肩を小突かれると、ハッと我に返った。
「彼女となに見つめ合ってんの」
「……るせーよ」
くすくす、と。
笑みをこぼしたかと思うと、止めていた足を動かす。俺もそれに倣って、教室へもどる途中。
「──紘夢」
彼女しか呼ばない、その名前を。
すれ違って数歩進んだところで、聞いた。
「……、鞠?」
さっきの公開告白の流れ的なものもあって、まだ周囲の目はここへと向いてる。
それなのに間違いなく、いま鞠は、俺の名前を呼んだ。