【完】STRAY CAT
……っつーか。
こないだの「狙ってる」発言は、なんだったんだよ。
あすみがマジで鞠を狙ってる素振りはない。
それにさんざん俺を煽ってた癖に、いまさら鞠のことが好きだって言われても困る。
「そういえば、さ。
あの子と、そのカレと出くわしたとき。……言ってた、喧嘩っていうのが気になったから、下のヤツに話聞いたんだけど」
「……ああ、」
そんなことも言ってたな。
鞠を狙ってるっていうあすみの発言のせいで話が逸れたから、すっかり抜けてたけど。喧嘩って、一体何のことだよ。
「先週のはじめに、路地裏で3人やられたの覚えてる?」
路地裏……アレ、か。
鞠と出くわしたファミレスのある、あのあたり。
繁華街が近く、夜には妖しげな色のライトが煌めく通りもあるあの場所は、色々と特殊な店もある。
だから俺らの関係者が訪れることも多いし、すこし道を外れたところに裏路地が多くて、喧嘩の多発する場所だった。
最近はそれも桁違いで、ウチも数回やられてる。
ここ最近、幹部があの地域によく出向いているのもそのせいだ。
「3人やられたうちのひとりが、動けない状態だったけどわずかに意識があったみたいでね。
話を聞くところによれば、女の子が仲裁に入ったって」
「、」
「そのあと偶然巡回してたあすみが合流したから、何も起こらなかったけど。
……女の子、どうやら恭の名前を出したみたいだよ」
俺の名前を出した、女。
しかも自分の身の危険を顧みず、喧嘩の仲裁に入るくらい正義感の強い女を、俺は、知ってる。
「それ。……ファミレスに行く、前日のことなんだよね」