【完】STRAY CAT



そこまで言われたら、なんとなく感じ取れた。

……つまりあすみは、ファミレスで俺と鞠の関係を知る前から、鞠のことを知っていたわけだ。



そう言われたら、ファミレスでのあの不自然な会話も、妙にふたりが親しげなのも納得できた。

仲裁に入った鞠が俺の名前を出したことで下のヤツが救われたなら、俺は別に怒ったりしない。



「でもそれ、俺にわざわざ隠すことじゃなくね?」



「……あすみが本当に彼女のこと、狙ってるんじゃないの?」



思わず、眉間にシワを寄せる。

そんなことないだろとは思いつつも、一応筋が通っているのもあって、蔑ろにはできない。



「あと。

暖が、『恭にしては元カノいい女じゃん』って言ってたよ」



……あいつ、あとでシメてやる。

言われなくても、俺にはもったいなさすぎるぐらいいい女と付き合ってたって自覚してんだよ、こっちは。




「好きなんでしょ? まだ、彼女のこと」



「……そうじゃなかったら噛み合わない会話しかしてねーだろ」



鞠が別れたいと言った理由は、どう考えたって母親のことが原因だと思う。

それから……橘花のこと。



もし、それが解決したとしたら。

解決してやれたら、鞠はまた俺のとこに……、いや。



「恭ってさ、運命とか信じるタイプだっけ?」



「あー?

ンな迷信みたいなもん、信じてもどうしようもねーよ」



そんなこと、考えるだけ無駄だな。

鞠にもどってきてほしいっていうのは単なる俺の気持ちであって、鞠にもう俺への気持ちが無いのなら、どうすることもできない。



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