【完】STRAY CAT







「……なんか今回、人数少なくね?」



ぽつり。小さくこぼした俺に、とててと駆け寄ってきたチカが「すくないよねー」と同意する。

それから、「応戦しないからだと思うよ」と一言。



「は? 仕掛けてくるから潰すんじゃねーのかよ?」



「恭ちゃん、またあすみの話聞いてなかったのかよ~?」



がしっと肩に腕を乗せてくるのは、暖で。

着ているのは、王子様顔に似合わない黒の特攻服。



……かくいう俺も、同じの着てんだけど。

俺の見た目と暖の見た目を比べたら、暖が残念すぎるだろ。



わかりやすく色分けされた、後ろに白の蓮の花を描いた特攻服。

下のヤツは赤、幹部は黒。……今日は、赤の割合が少ない。




「俺はそもそもあすみからなんも聞いてねーよ。

あいつに『お前はいつも通りでいい』って言われたし」



言った途端、チカも暖も、近くにいたなずなまでもが「ああ、ね」とでも言いたげな顔をする。

失礼なヤツらだな。俺は、人の話を聞くのが嫌いなんだよ。



「潰したところで、どうせ派生して違うのが生まれる。

……潰す手前で引いて、戦力だけ削ぎ落とせばいい」



どこで俺らの話を聞いていたのか、こちらに歩み寄りながらそう言うのはあすみで。

唯一藍色の特攻服を身に纏うあすみの背中の蓮には、鮮やかな蝶が留まっている。



「どちらにしろ、俺らは先に手を出せないからな」



藍華は初代からの決まりで、正当防衛でしか勝負できない。

つまり先手を打って相手を潰すことは出来ねーし、仕掛けてくるとわかった時はそれに応戦する。……ただ、それゆえに被害を未然に防げないのが、唯一の問題点だ。



いまのところ、大きな事件は起こってねーけど。

先に手を出せない俺らは絶対的に潰しておいた方が有利で、いつもならそんなめんどくせえことしねえのに。



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