【完】STRAY CAT
◆
「……なんか今回、人数少なくね?」
ぽつり。小さくこぼした俺に、とててと駆け寄ってきたチカが「すくないよねー」と同意する。
それから、「応戦しないからだと思うよ」と一言。
「は? 仕掛けてくるから潰すんじゃねーのかよ?」
「恭ちゃん、またあすみの話聞いてなかったのかよ~?」
がしっと肩に腕を乗せてくるのは、暖で。
着ているのは、王子様顔に似合わない黒の特攻服。
……かくいう俺も、同じの着てんだけど。
俺の見た目と暖の見た目を比べたら、暖が残念すぎるだろ。
わかりやすく色分けされた、後ろに白の蓮の花を描いた特攻服。
下のヤツは赤、幹部は黒。……今日は、赤の割合が少ない。
「俺はそもそもあすみからなんも聞いてねーよ。
あいつに『お前はいつも通りでいい』って言われたし」
言った途端、チカも暖も、近くにいたなずなまでもが「ああ、ね」とでも言いたげな顔をする。
失礼なヤツらだな。俺は、人の話を聞くのが嫌いなんだよ。
「潰したところで、どうせ派生して違うのが生まれる。
……潰す手前で引いて、戦力だけ削ぎ落とせばいい」
どこで俺らの話を聞いていたのか、こちらに歩み寄りながらそう言うのはあすみで。
唯一藍色の特攻服を身に纏うあすみの背中の蓮には、鮮やかな蝶が留まっている。
「どちらにしろ、俺らは先に手を出せないからな」
藍華は初代からの決まりで、正当防衛でしか勝負できない。
つまり先手を打って相手を潰すことは出来ねーし、仕掛けてくるとわかった時はそれに応戦する。……ただ、それゆえに被害を未然に防げないのが、唯一の問題点だ。
いまのところ、大きな事件は起こってねーけど。
先に手を出せない俺らは絶対的に潰しておいた方が有利で、いつもならそんなめんどくせえことしねえのに。