【完】STRAY CAT
「恭ちゃん……!」
殴っては沈めて、相手の拳や蹴りを避けて、を繰り返す。
暫くして聞こえたチカの声に、目の前の相手をまた沈めてからまだ敵の多く残る方へ向かうように指示を入れる。さすがに10分差じゃ一番隊も体力が残ってるし、補佐してもらうほどでもない。
……でも、頭の中に微かな違和感が残る。
藍華を狙うヤツで、正攻法で攻めてくるなんてありえない。
もちろん正攻法での喧嘩が一番好ましいし、何より藍華が格段に有利だ。
なのに、とくべつ喧嘩が強いわけでもないヤツらが、あえて正攻法を使うなんて裏があるとしか思えない。
「おいおい恭ちゃん~?
俺的には、もーちょい片付けといて欲しかったわ~」
「無理言うんじゃねーよ、バカ暖」
暖が来たってことは、三番隊が到着した証拠。
いつも通りに歩み寄ってきた暖が後ろについたのを見て、ふっと口角を上げた。
「ちゃんと補佐しろよ?」
「恭ちゃんこそ、
一番隊だからって体力ないとかやめてちょうだいよ?」
俺と暖は、なんだかんだ言って息が合う方だ。
だから俺が後ろを任せるのはいつも暖で、それにおいては絶対的に信頼してる。
「あすみの出る幕なさそうだな」
「活躍して後で褒めてもらおうぜ~」
「……いや、俺べつにあすみに褒められたくねーけど」
呑気に会話をしつつも、確実に相手の数を減らしていく。
あすみが到着した頃には、「直前で引く」計画なら、もうここで撤退しても構わないと言えるほどにまで数が減っていた。