【完】STRAY CAT



嫌な予感がした。

そしてこういう時の俺の予感は、とても良く当たる。



相手のトップが口角を上げたのを、離れているのに気配で感じた。



──ああ、そうか。

相手があくまで正攻法で仕掛けてきた、その理由。



「チカ、そこ退け!」



この、帰るタイミングを狙ってたからだ。



一体、どんな細工を施したのか。

開いたアクセルが緩まない上に、フロントもリアもブレーキが利かない。……つまり、スピードをゆるめられない。



間違いなく事故を起こす。

なら、少しでも被害を抑えられるやり方の方がいい。




「恭ちゃん……!?」



壁に激突させたところで怪我は免れられない。

グラウンドの中で唯一衝撃を吸収できそうなのは、ひとつだけ。



「恭!」



歯を食いしばって、握る力を強める。

何かあると疑ってはいたが、まさかバイクに細工されるとは思っていなかった。特にバイクは大量に並べてあった上に個々がデカいせいで、屈み込めば間に人が隠れていても気づかない。



──ガッシャーン!!



わざと車体を傾けるように体重をかけ、スリップさせる。

ガツンと重い衝撃で、身体が投げ出された。



一応受身は取ったものの、勢い良く落ちた衝撃は大きい。

駆け寄ってきたチカと暖が何かを言ってるのはわかったけど、それをうまく聞き取れなくて。──ぷつ、と。意識が途切れた。



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