【完】STRAY CAT
「……、っテェよ。
もうちょい優しくしろよ俺怪我人だぞ」
「お前こそ俺に感謝しろよ。
何が"病院嫌いだからたまり場で処置しろ"だ。ガキか」
はあ、とため息をつきながら包帯を巻く医者。
……こと、急に呼び出された保健医、みちるさん。
どうせ暇してたんだから仕事しろよ。
つーか、病院でアレコレ聞かれんの面倒だし、こういうのは身内の人間にやってもらった方が助かる。
幹部室の中に広がるオキシドールの匂いに、顔を顰めるなずな。
そして「細工されてたのは恭のバイクだけ?」と、なぜか顔に似合わずジャージを着てる暖に尋ねた。
「そ。念のため確認したけど、恭のだけ。
……お前もしかして向こうのトップの女寝取ったりしたんじゃねえの?だから個人的に恨まれてんじゃねえの?」
「お前ふざけんなよ……」
グラウンドの植え込みをクッションがわりに利用した俺は、一瞬意識こそ飛ばしたものの、大きな怪我をしたわけじゃなかった。
ただ「念のため病院行けよ」と、みちるさんはため息ついてるけど。
「あ、ごめんごめん。
恭ちゃんにはまだベタ惚れな元カノいるの忘れてたわ~」
「お、まえな……」
こいつマジで沈めてやりたい。
左に倒れ込んで腕やら脇腹やらは怪我してるけど、右手は無事だ。殴ってやろうか。
「つーか、あすみは?」
「ん? ああ、なんか……
帰ってきたんだけど、着替えてからどこか行ったよ」
「は? あいつ何やってんだよ」