【完】STRAY CAT
俺のバイクに細工されただけで済んだからよかったけど、そのあと色々することあるだろ。
どこ行ってんだよ、と思わず俺もため息をこぼした時だった。
ガチャとドアノブをひねる音の後、勢い良く開く扉。
幹部はあすみ以外揃っているからあすみしか入ってこないはずなのに、あすみにしてはありえない乱雑な開け方に、思わず視線を向けたとき。
「は……?」
目が合った相手は、長い黒髪の女。
俺を見ると同時に、その瞳からはぽろぽろと涙がこぼれ出す。
「ちょ……っ、なんでお前ここにいんだよ」
「っ、ばか……!!
恭が大変な目に遭った、って、」
白い肌を滑り落ちていく涙。
駆け寄ってきた鞠は、俺の背中に腕を回した。
「すごくすごく心配したの、っ……!」
「鞠、」
「おねがいだから、危ないことしないで……っ」
いや、危ないことしたわけじゃねーし。
むしろ今回のは、不可抗力みたいなもんなのに。
鞠がこんな風に動揺してるのは、あすみの表情でなんとなくわかった。
……適当に嘘でも言って連れてきたらしい。
「悪かったよ。……大丈夫だから泣くな。
あと、ちょっと怪我痛ぇから力ゆるめろ」
ばっと、離れる鞠。
それから「ごめんね」ってシュンとしてるし、潤んだ瞳のまま見つめてくるから、逆に抱きしめたくなった。