【完】STRAY CAT



「泣かないで、蒔……」



「だって、」



おねえちゃんが、痛いって泣いてるから。

まきも痛いの、って。



そうやって一緒に泣いてくれる蒔に、どう伝えていいのかわからなかった。

お母さんに、もう会えないんだよ、って。



まだ幼い蒔にそれを伝えなくてはいけないことが、ひどく悲しくて、苦しくて。

心臓を鷲掴みにされているみたいに、痛くて。



「っ、だいすきだよ蒔……」



しばらくそのまま一緒に泣いた。

まるで嘘みたいな一夜の話。だけど嘘じゃないその現実を受け止めるまでに、時間がかかってしまう。




結局。

中学受験を終えていたわたしは、三日間学校を休んだ。



単位を落とすことも無い義務教育に、救われた。

ママさんとは電話が掛かってきたその日にもう一度話をして、蒔と一緒に病院に向かった。



呼び掛けに答えることもなく、動くこともない。

蒔に、もうお母さんと一緒にいられないことを伝えたらこれでもかと泣き続けていたけれど、泣き止んだあとは一度も泣いたりしなかった。



わたしよりもずっとずっとつよい、5歳の女の子。

お母さんとわたしの、大切な、宝物。



「ママさん……本当にありがとうございました」



幼いわたしたちに変わって、色々なことを手伝ってくれたのがママさんだった。

お通夜からお葬式、その他わたしたちの面倒まで見てくれていたママさん。



2週間ほどお世話になったけれど、これ以上助けてもらうわけにはいかない。

わたしたちのことを本当の娘みたいに愛してくれてはいるけれど、本当の娘ではないから。



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