【完】STRAY CAT



「気のせいじゃねーから、すげえムカつく」



流されていたんだと思う。今みたいに。

その瞳から目を逸らしても、もう自分の気持ちにははっきり気がついてる。



「戻ってこねえくせに。

俺が怪我したって聞いて、いちばん大事な蒔のことまで置いて、俺んとこ来て……どうしたいんだよ」



「……わ、かんない」



恭のことが好きだ。誰よりもずっと。

だけどまた、その関係に終わりがくる。それが分かりきっているから、一緒にいたいなんて酷いこと、口が裂けても言えない。



もう二度と、恭に別れを告げたくない。

一緒にいてしまったら、離れられなくなる。



……覚悟を決めて離れた今でさえ、こんなにも恭を好きな気持ちは褪せていないのに。

引き裂かれる気持ちを、もう味わいたくない。




「……俺の方が、蒔のことも知ってる。

お前が猫派なことも、かぼちゃが嫌いなことも」



「恭、」



「……もう離したくねーんだよ」



くっと細められる瞳。綺麗な髪色。

恭は何も変わらずに居てくれているのに、わたしだけが、あの頃から変わってしまった。



「……だからその前に、離れなきゃ」



「鞠」



名前を呼ばれるだけで、こんなにも幸せだと思える。

出来ることなら、出会う前に戻りたい。……そう思ってしまうほど、そばにいられないことが悲しくてたまらない。



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